墜落制止用器具に係る質疑応答集
厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課 発行
(注記)
旧規格:「安全帯の規格」(平成 14 年厚生労働省告示第 38 号)
新規格:2019 年1月に告示予定の「墜落制止用器具の規格」
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1.墜落制止用器具の定義
Q.安全帯と墜落制止用器具はどう違うの?
A.「墜落制止用器具」には、従来の「安全帯」に含まれていたワークポジショニング(身体を作業箇所に保持すること)用の器具である旧規格のU字つり用胴ベルト型安全帯(以下、「U字つり用胴ベルト」といいます。)は含まれません。
なお、法令用語としては「墜落制止用器具」となりますが、建設現場等において従来の呼称である「安全帯」、「一本つり胴ベルト型安全帯」、「ハーネス型安全帯」といった用語を使用することは差し支えありません。
2.施行日及び経過措置
Q.施行日(2019 年2月1日)以降、一本つりの胴ベルト型墜落制止用器具は高さ 6.75 メートルを超える箇所で使用できなくなるの?経過措置はないの?
A.使用できません。ただし、経過措置により、2019 年8月1日以前に製造された安全帯(胴ベルト型(一本つり、U字つり)、ハーネス型のいずれも含む。)であって、旧規格に適合しているものについては、2022 年1月1日までの間、要求性能墜落制止用器具とみなされますので、高さに関わらず使用可能です。
詳しくは「改正のスケジュール」を参照して下さい。
Q.施行日(2019 年2月1日)以降、U字つり用胴ベルトは使用できないの? 経過措置はないの?
A.U字つり用胴ベルトについては、ワークポジショニング用の器具として使用することは差し支えありませんが、施行日(2019 年2月1日)以降、墜落制止用器具には該当しませんので、高さ2メートル以上の箇所で作業を行う場合、墜落制止用器具(フルハーネス型又は一本つり胴ベルト型(高さ 6.75 メートルを超える箇所ではフルハーネス型))との併用が必要になります。
ただし、経過措置により、2019 年8月1日以前に製造された安全帯(胴ベルト型 (一本つり、U字つり)、ハーネス型のいずれも含む。)であって、旧規格に適合し ているものについては、2022 年1月1日までの間、要求性能墜落制止用器具とみなされますので、高さに関わらず使用可能です。
3.墜落制止用器具の選択
Q.高さ 6.75 メートルを超える箇所での作業と、高さ 6.75 メートル以下の箇所での作業が混在するとき、常時フルハーネス型を使ってもいいのですか?
A.問題ありません。フルハーネス型は高さによる使用制限はなく、「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン」(平成 30 年6月 22 日付け基発 0622 第2号)「第4 墜落制 止用器具の選定」の「1 基本的な考え方」においても、「墜落制止用器具は、フル ハーネス型を原則とすること」とされています。
さらに、取付設備の高さや作業者の体重に応じたショックアブソーバのタイプとランヤードの長さ(ロック付き巻取り器を備えるものを含む。)を適切に選択することも必要です。
4.特別教育の対象作業
Q.高さ2メートル以上の箇所でフルハーネス型を使っている人は、全員、特別教育を受けなければならないのでしょうか?
A.法令で特別教育が義務付けられるのは、「高さが2メートル以上の箇所であって作業床を設けることが困難なところにおいて、フルハーネス型墜落制止用器具を用いて行う作業に係る業務」に限られます。
したがって、作業床が設けられている箇所においての作業、胴ベルト型墜落制止 用器具を用いて行う作業については、特別教育は義務づけられません。
なお、旧規格に適合しているフルハーネス型安全帯を使用して、高さが2メート ル以上の箇所であって作業床を設けることが困難なところにおいて作業を行う場合においても、特別教育は必要です。
Q.高所作業車を用いた作業についても、特別教育を受けなければならないのでしょうか?
A.高所作業車のバスケット内での作業であれば、通常、作業床があると認められるため、特別教育は義務付けられません。
なお、高所作業車のバスケット内で作業する場合であっても、高さが 6.75 メート ルを超える箇所で作業を行う場合には、フルハーネス型墜落制止用器具の使用が義務付けられます。
Q.「作業床」とはどのようなものですか?
A.法令上具体的な定義はありませんが、一般的には、足場の作業床、機械の点検台など作業のために設けられた床を指します。
また、ビルの屋上、橋梁の床板など、平面的な広がりを持った建築物の一部分であって、通常その上で労働者が作業することが予定されているものについても作業床となると考えられます。
具体的な判断は、所轄の労働基準監督署にご相談ください。
Q.身を乗り出す作業、手すりがない場所や開口部での作業について、特別教育が必要ですか?
A.一般的に、作業床上での作業であれば特別教育は義務付けられません。具体的な判断は、所轄の労働基準監督署にご相談ください。
なお、高さが2メートル以上の作業床の端、開口部等で墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所には、囲い、手すり、覆い等を設けること又は労働者に墜落制止用器具を使用させること等が義務づけられます。
Q.高さ2メートル以上の箇所でフルハーネス型墜落制止用器具を着用して通行や昇降をするだけの場合、特別教育は必要ですか?
A.「通行」や「昇降」をするだけの場合、特別教育は必要ありません。
Q.「通行」「昇降」の定義はありますか?工事の進捗確認、点検なども「通行」「昇降」 に含まれるのでしょうか?
A.法令上の定義はありませんが、一般的に、「通行」とは、通っていくという意味、「昇降」とは、昇ったり降りたりするという意味であり、それ以外の行為(工事の 進捗確認、現場巡視、点検など)は、「通行」や「昇降」にはあたりません。
ただし、昇降を主たる目的として、昇降しながら昇降用の設備(はしご等)の健全性等を確認するような場合は「昇降」に含まれます。
5.特別教育の科目の省略
Q.特別教育は、2019 年2月1日までに、全員が受けなければならないのですか?また、特別教育を受ける際、経験に応じて省略できる科目等はありますか?
A.一般には、必ずしも全員ではなく、高さが2メートル以上の箇所であって作業床を設けることが困難なところにおいて、フルハーネス型墜落制止用器具を用いて行う作業に係る業務に就く者に対しては、2019 年2月1日までに特別教育を行わなければなりません。
ただし、一定の経験のある者については、以下のとおり、一部の科目の省略が可能です。(平成 30 年6月 22 日付け基発 0622 第1号)
① 施行日(2019 年2月1日)時点において、高さが2メートル以上の箇所であって作業床を設けることが困難なところでフルハーネス型墜落制止用器具を用い行う作業に6月以上従事した経験を有する者は、「作業に関する知識」、「墜落制止用器具(フルハーネス型のものに限る。以下同じ。)に関する知識」、「墜落制止用器具の使用方法等」の科目を省略できます。
② 施行日(2019 年2月1日)時点において、高さが2メートル以上の箇所であって作業床を設けることが困難なところで胴ベルト型を用いて行う作業に6月以上従事した経験を有する者は、「作業に関する知識」の科目を省略できます。
③ 足場の組立て等特別教育受講者又はロープ高所作業特別教育受講者は、「労 働災害の防止に関する知識」の科目を省略できます。
なお、改正省令公布後施行日(2019 年2月1日)より前に、改正省令による特別教育の科目の全部又は一部について受講した者については、当該受講した科目を施行日以降に再度受講する必要はありません。
詳しくは「特別教育の科目について」を参照してください。
Q.「足場の組立て等作業主任者技能講習」の修了者は、特別教育の科目を省略できますか?また、「とび技能士」などは特別教育の一部省略はできないのでしょうか?
A.特別教育の一部省略の条件等は前の質問のとおりですので、「足場の組立て等作業主任者技能講習の修了」や「とび技能士」をもって特別教育の一部の科目の省略はできません。
教育義務ページ内で該当するかどうかで判断してください。
詳しくは「特別教育の科目が省略できるか確認」を参照してください。
Q.科目省略の要件に、「6月以上従事した経験」とあるが、この経験は胴ベルト型又はフルハーネス型を用いた作業であれば、どのような作業でもいいでしょうか?
A.高さが2メートル以上の箇所での作業であれば、作業内容に限定はありませんが、「6月以上従事した経験」に該当するためには、継続的にその作業に就いている必要があります。
Q.「6月以上従事した経験」の証明に、定められた基準はあるのでしょうか?
A.一般的には、当該労働者を雇用する(していた)事業者が証明することになると思われます。 証明に関して、法令で定められた基準・様式等はありません。
Q.「6月以上従事した経験」の考え方について、特別教育受講時点では6ヶ月の経験がないが、施行日(2019 年2月1日)時点では6ヶ月以上の経験がある見込みであるとき、特別教育の一部を省略する事はできますか?
A.6ヶ月以上の経験を見込み、施行日より前に科目の一部を省略して特別教育を受講いただくことは問題ありません。
ただし、施行日において経験が足りない場合には、省略した科目の補講が必要となりますので、ご注意ください。
6.特別教育の実施者
Q.特別教育は、外部の教育機関で受講しなければならないのでしょうか?
A.法令では、事業者に、特別教育の実施を義務付けておりますので、事業者が自ら特別教育を実施するのは、当然、差し支えありません。
Q.特別教育の講師要件はありますか?
A.特別の資格要件はありませんが、特別教育の科目について十分な知識、経験を有する者でなければなりません。
(平成 27 年8月5日付け基発 0805 第1号)
7.特別教育の記録
Q.特別教育の修了証や書類の保存義務はありますか?
A.事業者は、特別教育を行ったときは、当該特別教育の受講者、科目等の記録を作成し、これらを3年間保存しなければなりません。
8.その他
Q.高さを算定する場合の基準点は地上となりますか?屋根や足場は基準点となりますか?
A.原則として地上(GL)を基準としますが、十分な広さを持つコンクリート床面の上方で高所作業を行う場合など、さらにそこから墜落することが想定できない場合などについては、その高さを基準点とすることができます。
具体的な判断は、所轄の労働基準監督署にご相談ください。
Q.フルハーネス型を購入する際に補助金があると聞きましたが、本当ですか?
A.新しい規格に対応する機械への更新等を促進する目的で、「既存不適合機械等更新支援補助金事業(仮称)」を平成 31 年度予算として要求しているところです。
平成 31 年度予算が成立するまで、具体的な内容は未定です。(2019年1月30日現在)。
まとめ
お探しの質問は解決できましたか?
また、皆様はどこで受講されるのでしょうか。
工場、プラント内で実施される講習会でしょうか。
元請業者の講習会でしょうか。それとも所轄の労働局等で受けますか??
「プラント内で下請け業者100人くらいで受講したんだ。俺はフルハーネス型安全帯を6ヶ月以上従事した経験があるのに、6時間みっちり勉強したよ。」という方も多いのではないでしょうか。