フルハーネス型墜落制止用器具の選び方
★ 目 次
1.使用を義務付けられている作業例
労働安全衛生法で墜落制止用器具の使用が義務付けられている作業の一例をご紹介します。
関連規定 | 労働安全衛生規則 |
---|---|
労働安全衛生規則 | |
第130条の5 | 食品加工用粉砕機又は食品加工用混合機の開口部から転落の危険があり、蓋、囲い、柵等を設けることが作業の性質上困難な場合 |
第142条 | 粉砕機又は混合機の開口部から転落の危険があり、蓋、囲い、柵等を設けることが作業の性質上困難な場合 |
第151条の101 | 林業架線作業 |
第194条の22 | 高所作業車を用いた作業 |
第247条 | 型枠支保工の組立て等作業 |
第360条 | 地山の掘削作業 |
第375条 | 土止め支保工作業 |
第383条の3 | ずい道等の掘削等作業 |
第383条の5 | ずい道等の覆工作業 |
第404条 | 採石のための掘削作業 |
第517条の5 | 鉄骨の組立て等作業 |
第517条の9 | 鋼橋架設等作業 |
第517条の13 | 木造建築物の組立て等作業 |
第517条の18 | コンクリート造の工作物の解体又は破壊の作業 |
第517条の23 | 施コンクリート橋架設等作業 |
第518,519,520,521条 | 高所作業車を用いた作業 |
第532条の2 | ホッパー等の内部における作業業 |
第533条 | 煮沸槽等への転落防止 |
第563条 | 高さ2m以上の足場における作業 |
第564条 | 足場の組立て等作業 |
第475条の6 | 手すり等を設けることが困難な高さ2m以上の作業構台の端における作業 |
クレーン等安全規則 | |
第27条 | やむを得ない場合等に、クレーンのつり具に専用の搭乗設備を設け、労働者を乗せて行う作業 |
第33条 | クレーンの組立て又は解体の作業 |
第73条 | やむを得ない場合等に、移動式クレーンのつり具に専用の搭乗設備を設け、労働者を乗せて行う作業 |
第75条の2 | 移動式クレーンのジブの組立て又は解体の作業 |
第118条 | デリックの組立て又は解体の作業 |
第153条 | 屋外に設置するエレベーターの組立て又は解体の作業 |
第191条 | 建設用リフトの組立て又は解体の作業 |
ゴンドラ安全規則 | |
第17条 | ゴンドラの作業床における作業 |
ボイラー及び圧力容器安全規則 | |
第16条 | ボイラー据付工事作業 |
酸素欠乏症等防止規則 | |
第6条 | 酸素欠乏症にかかって転落するおそれのある酸素欠乏危険作業業 |
注意
上記作業以外でも「2m以上の作業床がない箇所、または作業床の端」、「開口部等で囲い・手すり等の設置が困難な箇所」についての作業では、墜落制止用器具は、フルハーネス型を使用することが原則となります。
2.フルハーネス型墜落制止用器具の種類(第一種・第二種)による選び方
ショックアブソーバを備えたランヤードについては、そのショックアブソーバの種別が取付設備の作業箇所からの高さなどに応じたものでなければなりません。腰より高い位置にフックを掛ける場合は第一種ショックアブソーバ、足元に掛ける場合には第二種ショックアブソーバを選定します。
● フルハーネス型に用いるランヤードの種類
ショックアブソーバーの種類 | 第一種 | 第二種 | |
---|---|---|---|
フックの取付位置 | 腰より上の位置 | 左記及び足元付近まで* | |
自由落下距離 | 1.8m* | 4.0m | |
基準 | 衝撃荷重 | 4.0kN以下 | 6.0kN以下 |
ショックアブソーバーの伸び | 1.2m以下 | 1.75m以下 |
* 第一種ショックアブソーバは、規格の自由落下距離1.8mに対し、フックを掛ける高さ0.85m、フルハーネスのD環の高さ1.45mとし、この差0.6mをランヤードの高さ1.7mに追加した距離2.3mを表示しています。
* 第二種ショックアブソーバは、足元にフックを掛けた場合、墜落阻止時の落下距離が長くなります。またフック部に曲げ荷重や外れ止装置に外力が加わらないよう、作業環境を十分考慮した上でご使用ください。
3.落下距離を確認しましょう!
● 落下距離を知ることが製品選びの第一歩
今回の規格改正では、衝撃を複数個所に分散させることができるフルハーネス型の原則使用と同時に、現行規格の製品よりもランヤードの衝撃(使用者の質量 × 落下距離)を吸収する能力を高めることが求められています。
相応のショックアブソーバをランヤードに備えることで上記の目標は達成できる一方、墜落時の落下距離は長くなります。製品等に記載の性能をご確認の上、ご自身の作業環境に応じた製品をお選び下さい。
● フルハーネス型の落下距離等の説明
● 胴ベルト型の落下距離等の説明
4.「労働安全衛生法施行令のガイドライン」と「一般的な建設作業の推奨するガイドライン」の違い
★ 建設作業以外の場合、原則、「労働安全衛生法施行令のガイドライン」が推奨になります。
● POINT!
6.75mを超える箇所では、フルハーネス型を選定(最低基準)
施行令のガイドライン
【第4】墜落制止用器具の選定
1 基本的な考え方
胴ベルト型を使用することが可能な高さの目安は、フルハーネス型を使用すると仮定した場合の自由落下距離とショックアブソーバの伸びの合計値に1mを加えた値以下とする必要があること。
このため、いかなる場合にも守らなければならない最低基準として、ショックアブソーバの自由落下距離の最大値(4m)及びショックアブソーバの伸びの最大値(1.75m)の合計値に1mを加えた高さ(6.75m)を超える箇所で作業する場合は、フルハーネス型を使用しなければならない。
4m + 1.75m + 1m = 6.75m(最低基準)
注意
ハーネス型を着用し、作業床が基準値以下(6.75m以下)から墜落した場合、地面に激突するおそれがあります。
その危険を回避するため、基準値(6.75m)に満たない場合は、胴ベルト型が認められています。
下記図の(実際の状態)を見るとわかりやすいですね。
★ 建設作業の場合、「一般的な建設作業の推奨するガイドライン」が推奨になります。
● POINT!
5mを超える箇所では、フルハーネス型を選定(建設作業等)
一般的な建設作業の推奨するガイドライン
【第4】墜落制止用器具の選定
2 墜落制止用器具の選定(ワークポジショニング作業を伴わない場合)
胴ベルト型を使用することが可能な高さの目安は、建設作業におけるフルハーネス型の一般的な使用条件(ランヤードのフック等の取付高さ:0.85m、ランヤードとフルハーネスを結合する環の高さ:1.45m、ランヤードの長さ1.7m(この場合、自由落下距離は2.3m((1.45-0.85)+ 1.7)ショックアブソーバ(第一種)の伸びの最大値:1.2m、フルハーネス等の伸び:1m程度、を想定すると、目安高さは5m以下とすべきであること。
これよりも高い箇所で作業を行う場合は、フルハーネス型を使用すること。
● 一般的な使用条件の算出方法
① まずは、自由落下距離を算出する
自由落下距離 =(結合する環の高さ - ランヤードフック等取付高さ)+ ランヤード長さ
2.3m =(1.45m - 0.85m)+ 1.7m
② 次に一般的な使用条件を算出
一般的な使用条件 = 自由落下距離 + ショックアブソーバーの伸び最大値(一種) + ハーネスの伸び
4.5m = 2.3m + 1。2m + 1m
③ よって目安の高さは、5m以下とすべきである。
一般的な使用条件 ≦ 目安高さ
4.5m ≦ 5m
注意
柱上作業などで使用される「胴ベルト(U字つり)型」(商品名:柱上安全帯)は、【墜落制止用器具】として認められていません。「胴ベルト(U字つり)」を使用する場合は、作業の状況によりフルハーネス型との併用が必要となりますので注意しましょう。